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有機リン系農薬(国内農薬登録分) 総説
毒性および環境影響

(アセチル)コリンエステラーゼは、人を含む動物界における神経伝達に欠かせない酵素として普遍的に分布しているため、毒性作用の種選択性はありません。そのため、人や家畜・家禽・水産動物、環境中の動物(とくに魚類、水棲の両生類・は虫類、水棲昆虫、甲殻類、その他害虫の天敵等)にも強い毒性作用を示します。人が低濃度で長期間曝露した場合、化学物質過敏症の発症リスクが非常に高くなります。リン酸エステル類は化学的に不安定で、生体中や環境中に残留しにくいともいわれますが、そのまま残留し、環境中で太陽光線の作用により、一部分が構造変換されたもの(チオン型リン酸エステル型殺虫剤に対応するオキソン体)がより強い毒性を発揮するといった事例も知られています。神経毒性に加えて、変異原性や発がん性が疑われるものもあります。
また、動物実験により、急性毒性が比較的低いと判定されているものであっても、とくにハロゲンやニトロ基、シアノ基のような誘起効果または共鳴効果による電子吸引性を持った官能基をもつものは、その物質自体もしくはその分解生成物が環境中に長期間残留する可能性があり、長期間にわたり生態系に影響を与える可能性が疑われます。互いに類縁物質の関係にあるともいえるメチルパラチオンとフェニトロチオンの急性毒性に大きな差があるように、毒性作用の強弱と分子構造との間の相関はあまり明瞭ではないとされます。


メチルパラチオン(特定毒物) フェニトロチオン(MEP)(普通物)
農薬の殺虫剤として使用されていた時代は、通常の使用方法によっても、人に対する致死性が指摘されて社会問題化した経緯があり、現在使用禁止。変異原性あり。
急性毒性:LD50(ラット、経口) 6mg/kg
農薬の殺虫剤としての通常の使用条件による限りでは、人に対する致死性は指摘されていないものの、低濃度でも長期間継続的に曝露することによる化学物質過敏症発症のリスクが問題視されている。変異原性あり。
急性毒性:LD50(ラット、経口) 924mg/kg

単に急性毒性値を毒性によるリスクの指標とすることは、誤解を招くおそれもあるので注意が必要である。上記はその例。


リスク-ベネフィットバランス評価
これらの農薬製剤については、対応する用途の、より低リスクで実用上の有効性の高い成分を含む製剤が多数実用化されているため、あえてこの種の製剤を使用する意義はないとされます。また、実用上の問題点として、殺虫剤に対する抵抗性害虫の発生などが指摘されます。

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